「韓国・ミニ農業紀行」 エゴマ 編(密陽・ミリャン)

ここに来る前、業務とは直接関係のない事ながら、自分達が北海道の北辺の、海辺の街にいた事を、頼まれもしないのに、問わず語りに語っております。北海道といえば、農業や漁業等、第1次産業。

北海道のお土産で有名な「六花亭」のお菓子の包紙の絵柄にもなった、開拓農民であり、反骨の画家・坂本直行画伯の素朴な風合いの水彩画にも描かれている、サイロの風景。

自分達が、住んでいた家の 家の窓からの風景’北海道・オホーツクの街)

冬季には全く耕作できない環境の中で、日本の他のエリアより、広く拓かれた原野に、多頭数の牛を肥育(牧畜)する、或いは大型のトラクターで大量の作物を収穫する、北海道の農家のイメージを持たれている方も多いのではと、思います。

そんな中で、私たちが住んでいた海辺の街の郊外で、偶然・隣に、無農薬・有機野菜を作り、40頭弱の完全放牧の乳牛を飼育し、運営している農家がありました。

それが縁で、自分達は図らずも、その、本当に食べれば、口の中に滋味がほとばしる、甘みのある野菜。ジェラート(アイスクリーム)にしても、そのまま飲んでも抜けの素晴らしく良いミルク、地鶏の卵を毎日のように、味わう恩恵を受けました。

Fファームより提供して頂いていた 完全・無農薬の有機野菜 

そこで、その農家のF氏より、さまざまな農業の面白さを伝え聞いたのです。

そのひとつに、韓国での有機栽培や循環農法の話がありました。

当時、韓国の農業に興味があった訳ではありませんでしたが、北辺の大規模な耕作が常識(乳牛なら100余頭、肉牛なら500~1000頭を越える規模が当然)の環境の中で、独自の方向を模索、実践していたFファームを通して、どんどんと、人が人として生きる為の農業の魅力を感ずる事となったのです。

「韓国のミルクは、ノン・ホモだから、美味しいはずだよ。」と、よく語っていた。Fさん。その通り、韓国のミルクはたしかに、Fさんの所のミルクとそっくりな柔らかな甘みがありましたよ・・・。

今回、図らずもお客様のご依頼で、釜山よりKTXで40分弱の、アリラン祭りで知られる密陽(ミリャン)の、エゴマ農家に伺うという話になった時、お電話で、今回、お世話になったキム・ウンソプさんの物腰に触れて、Fさんのことや、お世話になった農家の方々のことを想いだしてしまいました。

アリラン 祭りの街 密陽 の 概観
密陽  の  概観 2

密陽(ミリャン)は、映画「密陽」http://www.youtube.com/watch?v=J4NH0dsXzug&feature=fvw(洋題 シークレット・サンシャインとして、主演女優のチョン・ドヨンが、2007カンヌ国際映画祭で、最優秀主演女優賞を獲得、共演も、実力派ソン・ガンホ)でも、知られた小都市です。

山口県から来られて、ご自身も退職後10年間、農業をされているお客様(84歳で、お一人で、来られるバイタリティ。アジアの色々な地域に行かれているそうです。)の、”エゴマ”の栽培農家を紹介して欲しいというご依頼が、今回のことの発端でありました。

釜山駅から、KTXに乗り、ほどなく、密陽駅に到着。

迎えに来て頂いた、キムさんの車で、早速、キムさんの畑へと迎いました。韓国料理では、サム(包む)例えば、ご飯や刺身をエゴマの葉にくるんで、テンジャン(韓国味噌)や、ヤンニョンを添えて、食べる。エゴマの葉を醤油漬けにして、ご飯をくるんで食べる。本当に、極、身近な食材なのです。

密陽市 キム・ウンソプさんの エゴマ菜園  1

実に、コンパクトな規模の菜園なのですが、キトサン”エゴマ”というブランドを構築し、家族のみの小規模菜園だけで、キムさんは、年間600万円弱の純収入を挙げておられるそうです。キムさん曰く、「あんまり、大きかったら、手間がかけられないし、かかりすぎる、規模はこれで充分。」

土や作法の安全性、商品へのこだわりもさることながら、インターネットの直販ショップhttp://malgun.net/(キムさんのサイト)、http://www.mirpia.kr/(キムさんのような農家が、共同で運営している、こだわり農作物の、直販モール)で固定のお客様を増やし、かた崩れしたものは、ソウルの市場に卸す。

農法の視察の為、ニュージーランドやオーストラリアにまで、行かれたりする。また、啓蒙活動にも熱心で、自分のお仲間は勿論のこと、エゴマの栽培方法についても、サイト内での丁寧な解説をされている上、問いあわせの電話が全国からあるとの事でした。

特に、印象に残っているのが、サービスの勉強の為、カリスマ・タクシーで有名な京都のMKタクシーのセミナーに参加された時の、お話で、「本当に、勉強になった・・機会があれば、あなたも行かれたらよい。」と話されていたことです。生産から、販売まで、一貫して、てがける方の佇まいに、FTAなどで喧しい農業の、ひとつのあるべき姿を垣間見た気もしました。

韓国は、もともと文献をひもとけば、農業国家であり、京都などの伝統的な野菜の保存方法と極めて似通った、食養の知恵を、これまで、ここかしこで、たびたび眼にして参りました。お昼に、キムさんがエゴマを卸している、畜産農協の飲食店で韓牛を頂きながらあらためて、その事を感じる想いがしました。

キム・ウンソプ さん の 菜園 2